様々なシーンで利用が加速している産業用ドローンですが、利用にあたって問題になるのが安全面・セキュリティ面。ドローンサービス提供事業者やドローン活用ユーザー企業のセキュリティ対策やリスク管理の現状はどうなっているのでしょうか。
ドローンの活用が民間でも進んでいる中で、政府も有人地帯において補助者なしでの目視外飛行や無人航空機における携帯電話等の端末の上空利用緩和など法整備に着手しています。
また、IoTによってドローンとその他の機器やシステムが連携し、データ分析などにも活かされています。このような状況下で、ドローンに関連するセキュリティ実装の重要性が高まっています。
今回は、セキュアドローン協議会の「ドローンの業務活用におけるセキュリティ対策の意識調査」(2023年12月6日公開)を元に、ドローンの業務活用におけるリスクや、対策について情報をまとめています。
ドローンの業務活用において感じるセキュリティ・リスクとは?
ドローンを業務活用する際、実は様々なリスクが介在しています。そう言われて、何か思いつくものはありますでしょうか。そして、一体どのようなものがあるのでしょうか?
一般社団法人セキュアドローン協議会が公開しているドローンの業務活用におけるセキュリティ対策の意識調査に基づいて、企業がリスクを感じている項目で、割合が高いものをまとめてみました。
調査の対象としては、「機体メーカー・機体関連機器メーカー」「ドローンサービス提供事業者」「ドローン活用ユーザー企業」になり、実際にドローンに関わっている事業者になります。
実施期間 | 2023年11月1日(水)~11月17日(金) |
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回答数 | 136件 |
調査対象 | 「機体メーカー・機体関連機器メーカー」「ドローンサービス提供事業者」「ドローン活用ユーザー企業」 |
実施方法 | インターネットによる調査 |
グラフに視覚化すると、上記のようになりました。1つずつ見ていきましょう。
電波障害・GPS障害 73.5%
ドローンを操縦するにあたり、コントローラーとドローンの間で電波の送受信が発生しています。電波が届く途中に障害物や媒体があると、電波が届かないことや変化してしまうケースがあります。
このとき、ドローンの電波が他の機器などで阻害されることを「電波干渉」と言います。
ドローンの電波干渉は、無線通信や制御信号が、他の電子機器や通信システムと競合する現象を指します。これは、無線周波数帯域の重複や周囲の電波環境の影響によって引き起こされます。電波干渉が発生すると、ドローンの通信が不安定になり、制御が難しくなる可能性があります。
周囲の電波環境や使用されている無線機器によって、ドローンが利用する周波数帯域が占有されたり、電波の衝突が発生することが原因になっています。これにより、飛行中のドローンが制御信号を失ったり、映像伝送が中断されたりするのです。
この問題に対処するためには、周囲の電波環境を注意深く調査し、適切な周波数帯域を選択をするなどの対策が必要です。
また、無線通信のセキュリティを強化し、他の通信システムとの干渉を最小限に抑える技術の開発も進められています。
墜落:73.5%
ドローンの墜落リスクは複数の要因があります。操縦者の技量や機体の機械的な不具合、気象条件の急変、上記の電波干渉などがその主な要因です。
操縦ミスや風の強さにより、ドローンが制御を喪失してしまうと、墜落の可能性が高まります。
また、技術的な問題やバッテリーの不調が原因で急激な高度の喪失が発生することもあります。
人々や建物、電線や木などへの衝突も発生件数が多い事故です。ただ、飛行中の状態を監視するセンサーや技術の進化により、自動回避機能や緊急時の安全な着陸が可能になりつつあります。
規制やガイドラインの順守は重要であり、操縦者の技量や知識の向上が求められています。
ドローンで取得した情報漏えい(各種ログや映像・画像データ等)69.9%
ドローンが搭載したカメラやセンサーが機密情報やプライバシーに関わるデータを収集した際には、それが不正アクセスやハッキングによって漏えいする可能性があります。また、無線通信や制御システムにセキュリティの脆弱性があると、外部からの不正なアクセスが可能になり、機密情報が流出する危険があります。
対策としては、強固な暗号化技術の利用やセキュリティの実装等になります。
利用する事業者としては、セキュアな通信手段を使用し、ドローンのシステムを随時アップデートして最新のセキュリティ対策を導入することが重要になります。
法的な側面でも、プライバシーや機密情報の保護に関する法令やガイドラインも確認することをお勧めします。
対策を講じることで、ドローンの情報漏洩リスクを最小限に抑えることが必要となります。
悪意ある第三者によるハッキング・乗っ取り:65.4%
ドローンのハッキングや乗っ取りは、ドローンの通信を傍受・妨害し、操縦者の制御を無効化したり、自ら機体を操縦することで人や機体に危害を加えます。
上記の情報漏えいと同じく、制御システムにに脆弱性があると、不正アクセスされる可能性があるのです。
最近では、ロシア・ウクライナ問題でもドローンのハッキング技術が注目されており、今後世界でもハッカーの数が増えていくと予想されています。
ハッキングなどのサイバー攻撃については、国内でもホワイトハッカーによる展示会が開催されるなど、対策の啓蒙活動が活発になっています。
Japan Drone 2022において、ホワイトハッカーによるドローンサイバー攻撃の擬似デモが公開されているので、是非ご覧ください。
悪意ある第三者による脆弱性の悪用 45.6%
上記の情報漏えいやハッキングと同じく、ファームウェアやソフトウェアの更新が怠られると、既知の脆弱性が悪用される可能性が高まります。
さらに、物理的なリスクとして、ドローンは比較的簡単にキャッチされ、機体や搭載機器が不正に取り外される可能性も考えられます。
産業用ドローンのセキュリティ対策
では、どれ程の企業がドローンのセキュリティ対策を実施しているのでしょうか。
セキュアドローン協議会の調査によると、未だに活用企業の5.9%しか対策をしていないようです。
セキュリティ対策を講じている企業の取り組みとしては、社内クラウドの活用、国産セキュアドローンの採用、暗号通信・ブロックチェーンの検討、独自サーバーの設置などが多いようです。
また、簡易的に飛行域内の立ち入り制限を行う事例もあります。
まとめ
産業用ドローンをはじめとした、ドローンの市場は年々成長の一途を辿っている一方で、
ドローンのセキュリティ対策については、2022年3月に経済産業省より、「無人航空機分野 サイバーセキュリティガイドライン」 が公開され、無人航空機の汎用的なシステムモデルについて定義されるなど、ドローンに関するサイバーセキュリティについても議論が活発になっています。
今回の調査レポートでは、ドローンのセキュリティ対策を実施している企業はごく僅かという結果となっており、対策が急務という状況ということが明らかになりました。
様々なセキュリティリスクがある中で、どのような対応が必要なのか。今後、実際に対策を実施する企業が増えることを期待しています。
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